Q1現在はどのようなお仕事をされて
いますか?
電子漫画の営業・編集をしています。双葉社の電子漫画作品をより多くの人にお届けできるよう、主に電子書店さんに向けて働きかける営業の仕事と、漫画家さんと電子向けの漫画づくりをする編集の仕事をしています。電子漫画の市場を追いかけながら、どうしたら双葉社の作品を読んでもらえるか、どのような作品が求められているのかを、日々考え続けています。
Q2在学中は文学部でどのようなことを
学んでいましたか?
在学時、私は内藤淳先生と中釜浩一先生、2つのゼミに所属していました。内藤淳先生のゼミでは、3年次にスティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』を、4年次にジョナサン・ハイトの『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』を読み込みました。中釜浩一先生のゼミでは、3・4年次にトマス・ネーゲルの『どこでもないところからの眺め』を、2年かけて読み込みました。
卒論では、「強制しても正当とされる行為はあるのか ミルの『自由論』から」というテーマで、「多様性の尊重」について書きました。「多様性の尊重」を主張するミルの考えを支持する一方、ミルもまた多様性を尊重できずに強制してしまっている行為があるのではないか、ということを論じました。ゼミでの議論などを通して、道徳よりも多様性を大事にしている自分の考えの特徴に気づき、そうした考えをまとめたいという思いから、このテーマに決めました。
Q3学生時代のいちばんの思い出を
教えてください。
内藤ゼミと中釜ゼミ、それぞれのゼミで夏季休暇に合宿をしたことが、いちばんの思い出です。いつもは時間ギリギリまで議論が白熱しても、ある程度きりの良いところで授業を中断し、来週に持ちこさなければいけなかったところを、合宿では時間を気にせず存分に議論することができたので、とても楽しかったです。先生とも一緒に深夜まで語り明かすことができたのが印象的でした。
哲学科ではゼミ加入前の1年次にも、学年全体で合宿をする機会があり、その時もさまざまなテーマで自分の考えを発表する場がありました。そこから教授がどのように議論を発展させていけば良いのかを、丁寧に教えてくれました。こんなにも多種多様な考えを持った人達とこれから議論していけるのだと、気持ちが高揚したのを今でも覚えています。
人間の本質に迫るような話は普段なかなか人と話す機会がないと思いますが、哲学科では常日頃考えていることを話せる空気があったため、そんな人達と様々な考えを交換しあう時間は、本当に貴重なものだったとしみじみ感じています。
Q4学生生活の中で得たもの、
身につけたことは?
ゼミを通して、あらゆる思考力を養うことができたのではないかと思っています。
どちらのゼミも、ゼミ生が担当範囲の要約レジュメを発表し、その解釈が正しいのか、そこで主張されていることについて自分がどう思うのか、ということについて議論する形式でした。それぞれの著者の持つ思想内容ついてはもちろんのこと、それらをあらゆる視点から考え読み取る力、それらに対する自分の意見を言語化する力、他の人の意見を深く理解する力…そうした思考力を鍛えることができました。人と比べて自分の考えにはこういう特徴がある等、様々な議論を通して自分を知ることもできました。
Q5今の仕事を選んだ動機・きっかけを
教えてください。
昔から漫画が大好きだったのですが、具体的に出版社のお仕事に興味を持ち始めたのは高校生の時です。愛読していた漫画雑誌に「編集部に遊びにきませんか?」という企画が載っているのを見つけ、本来なら小学生向けの企画だったところを、編集部にお願いして参加しました。その時に意見を聞かれた雑誌の表紙デザイン案が後日、形となって店頭に並んでいるのを見た時とても嬉しく、そこから編集者の仕事に興味を持つようになりました。
Q6今のお仕事に生きている、
つながっていると思う、学生時代の
学びを教えてください。
やはりゼミで身につけた思考力が、とても役立っているように感じています。
特に出版社の仕事には正解がなく、様々な考えを持ちながら働く人達がいる中で、自分はどのような立場で考え行動していくのか、ある程度は自分で決めていかなければなりません。また、物事を判断していく上で、仕事相手や読者の方々がどのようなことを大切にしているのかを理解することも、重要になっていきます。そうした時に、自分の意見を持ち言語化することや人の意見を深く理解することに向き合い続けた、学生時代とのつながりを感じます。
また、「自主マスコミ講座」の出版コースにも所属していたので、そこではまさに今のお仕事につながるさまざまなご縁を頂きました。先輩方から話を聞いていたおかげで、仕事内容に大きなギャップを感じずにスタートすることができたのも、大きかったように思います。
Q7仕事をしていてどんなときに
やりがいを感じますか?
自分の仕掛けた作品を読んだ読者の方々から嬉しい感想をもらえると、安堵とともにやって良かったなぁと強く感じます。私自身、漫画の力にたくさん助けられてきたので、私もそうした力を少しでもお届けしたいと思っているからです。
また、この作品はおもしろい!この作家さんには才能ある!と思った時に直接働きかけることができるので、そのぶん責任感や緊張感もありますが、大きなやりがいを感じることができます。
Q8法政大学文学部をめざす高校生に
メッセージをお願いします。
私は、人の気持ちを思いやれる大人になりたいと思い、さまざまな考え方を学べる法政大学文学部哲学科を志望しました。まだまだ発展途上ではありますが、あんなにも多種多様な人と出会い、様々な考えに深く触れることができた4年間は、もうないのではないかなと思います。そして卒業後も交流の続く教授や同級生、先輩、後輩…かけがえのない出会いがたくさんありました。
もちろんどんな環境でもある程度は自分次第だと思いますが、いろいろなことを議論できる仲間や環境を探している方には、うってつけの場所です。皆さんにも、ぜひ法政大学文学部でかけがえのない時間を過ごして欲しいなと思います。